只今、婚活中。相手はかぐや姫。

日本最古の物語、竹取物語。一人の女性に5人の男が求婚し、翻弄されるストーリーである。求婚者が大挙する美貌を持っているが、最終的に「月」に帰ってしまうという破天荒なかぐや姫が主人公。「地球の男に飽きたところよ」ってことだろうか。身分の高い人からの求婚に「告られたから、フリました。」ということが通用する時代背景ではないため、5人の求婚者に対して丁重にお断りするための無理難題なミッションを言付ける。惚れた弱みとやんごとなきプライドで葛藤しながら、あの手この手で奮闘する男たちであるが、結果はすべて失敗に終わってしまう。恋は闇、惚れた女性と結婚をしたいという男心は過去も現在も変わらぬ感情であり、同じ男として不憫でならない。将来的にかぐや姫と結婚を望む青年が現れた場合、どうにかして結婚に繋げられる術はないのだろうか。

初めに断っておくが、僕は結婚をしているため、ここでの考察の対象外である。友人・知人等、もしくは最愛なる息子に「一目惚れしたんだけど、どうやらその女性はかぐや姫っぽいんだよね。」と相談された場合を想定して、個々のミッションを検討し、達成して結婚を成就する方法を考えてみたい。現代の婚活はインターネットを駆使した情報戦であるが、まずはアナログな情報を収集してみよう。以下に『竹取物語』に記述された手に入れるべき物と任務者、その顛末をそれぞれまとめてみたい。

1、仏の御石の鉢 (石作の皇子)

天竺(インド)にあると言われる光がある鉢。大和国(奈良県)の山寺にある賓頭盧の前にある墨の付いた真っ黒な鉢を持って行き、かぐや姫に「光がない」と見破られる。

・唯一無二の1点ものでインドにある。

・伝来関係がはっきりしている仏使用のレア物。

・まず所有者が手放すはずがなく、ほぼ入手困難。

・光がある類似する鉢があり、科学的な測定等の検査結果に問題がなくても、本物が変わらず存在する限り、ただの偽物である。

2、蓬莱の玉の枝 (くらもちの皇子)

玉の枝があるという蓬莱山に出かけると装い、秘密の工場で工人を雇い、玉の枝を偽造する。5人の求婚者のうちで一番かぐや姫との結婚に近づくが、工人に代金を払わずにいたところ、工人がかぐや姫に請求に現れ、偽造が露呈し、失敗する。

・まず、「蓬莱山」は想像上の山。

・現実世界で自然に「白銀の根」・「黄金の茎」を持ち「白き玉」が実る木は存在しない。

・結果、作るしかないが科学的な検査を行えば、人工物であるとわかってしまう。

3、火鼠の皮衣 (阿倍のみむらじ)

元々、天竺(インド)にあった物を高僧が唐国(中国)に持参し、それが船により日本に渡来し、それを買い付け手に入れた。「本物であれば、燃えないはず。」というかぐや姫の指摘により、火の中に入れさせたところ燃えてしまい、失敗。

・後述。

4、竜の頸の玉 (大伴の大納言)

国内の海や山に現れるという竜の頸にあるという5色の玉。従者を遣わし、大納言自身も竜を殺そうと旅に出るがことごとく災難に遭い、失敗する。

・そもそも竜の存在は現在まで確認されておらず、無理な話

・奇跡的に竜の頸の玉を入手したとしても本物であると証明することも困難である。

5、燕の子安貝 (石上の中納言)

燕が卵を産むときに出すという貝殻。燕の巣に貝殻があったという事例はある。中納言は燕の巣を探し、出産の現場にいて自ら燕の子安貝を取ろうとするが、最終的に糞を掴み、高所から落下して腰を折る。

・子安貝(タカラガイ)は安産のお守り。

・貝殻を巣に運ぶことはあるらしいが、子安貝(タカラガイ)である確率は極端に低い。

・あったとしてもただのタカラガイであり、燕より出たという証明は困難。

以上、5人とも痛々しいが、1・2・4・5は詳述した通り、ミッションクリアは容易ではない。唯一、3、火鼠の皮衣のみ可能性がありそうなのである。

・「火鼠」は想像上の怪物である。

・「火鼠の皮衣」であることは前例がないため、「である」ことも「でない」ことも科学的に証明できない。

・そうなると、かぐや姫の言う『火鼠の皮衣』の特徴である「燃えない」ことが要件となる。

・「燃えない」ことを証明できれば、勝算はある。

つまり、「燃えない衣」を探すことになるが、実際に探してみると現代科学の進歩は本当に凄い。「燃えない衣」は技術力の向上で開発されているようだ。インターネットで検索したところ、【参考】に挙げた動画が見つかった。赤城工業株式会社。失礼ながら、存じ上げなかったが、本当に燃えていない。僕自身にとって縁もゆかりもない会社であり、【参考】として動画を上げさせていただくことも恐縮であるが、日本最古の物語で不可能だったことを2020年現在可能にしてしまったドラえもんのような素晴らしい会社が存在していたのである。もはや、「火鼠の皮衣はじめました」と言っても過言ではない。

「燃えない衣」にも関わらず、熱くなり過ぎてしまった。時を戻そう。まとめると、かぐや姫との結婚は、3番目に求婚し、「火鼠の皮衣」を入手するミッションを承り、すぐに赤城工業株式会社様に相談する。唐国の船を待つ必要はない。気になるのはお値段であるが、人生を左右する重要な局面である。給料・ボーナス・貯金等全てを投げ打つ覚悟で。

最後に、「火鼠の皮衣」を手に入れることができるあなたに。日本国憲法上、婚姻は「両性の合意のみに基いて成立」するとされる。決して「火鼠の皮衣」の入手によって成立するものではない。最終的にはかぐや姫の心によるところが大きいのである。「火鼠の皮衣」が容易に手に入る今、その余った労力を無条件に結婚したくなり、「月」を捨ててでも一緒にいたいと思える男への自分磨きに使ってはどうだろうか。二人寄り添いハネムーンで「月」に行ける日もそう遠くはない。頑張れ、最新の求婚者達。

【参考】

堀内秀晃・秋山虔 1997『新日本古典文学大系17 竹取物語 伊勢物語』岩波書店

https://m.youtube.com/watch?v=UjdxTLfQzmg

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