3人の君をのせて 〜女性の活躍から見る『天空の城ラピュタ』〜

何回観たであろうか。テレビの再放送は数知れず、そのたびにストーリー、もっと言えばセリフまで覚えているのに、またテレビに釘付けになっている。スタジオジブリ制作のアニメ映画、宮崎駿監督『天空の城ラピュタ』(以下、『ラピュタ』)である。独特の世界観と引き込まれる物語。不思議なことに観るたびに無意識ながら新しい気づきがあり、いつも終わった後には、新鮮な心地ですらある。きっと、年齢やその時々のポジション等によって色々な視点が用意されているのではないだろうか。今回は、30代後半になった既婚子持ち男性が直近で観た『ラピュタ』で感じたメッセージをお伝えしたい。

元々、宮崎駿監督の作品は、主人公が女性であることが多い。『ラピュタ』も同じようにシータという女の子が主人公であるとおじさんには見えるのである(物語の中心にはバズーという男の子もいて抜きでは語れないが、少なくともバズーとシータはヒーロー、ヒロインとしてW主役であると思う。)。作品中には、シータの他にも個性豊かな女性が登場しているが、その姿は実に多様である。

2016年4月。女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、以下、推進法)が施行された。同法は今年の6月に認定制度の開設等を内容とする改正が行われ、2022年にも義務の対象を拡大する改正が予定されている。少子高齢化の進行は深刻さを増し、労働力人口が減っていく中において女性の活躍が非常に重要視されることは、時代の流れとしては当然のことであろう。名称も男女雇用機会均等法(1985年)などに比べ、「女性活躍」といった字面から見てもより具体的であり、これでもかというほどの強調する意志を感じるものである。ただ、立法の背景や意図、内容からしても、この法律で言うところの「活躍」とは職業現場でのことを想定していることは明白であり、いささか選択肢が限られているようにも思われるのである。

『ラピュタ』の登場人物中で女性活躍推進法を体現する人物がドーラである。「40秒で支度しな。」、「船長とお呼び。」などの名言を携え、上意下達の絶対的な存在であり、空中海賊ドーラ一家のボスである。メンバーには「ママ」と呼ばれるが、組織を束ねる長であり、判断力・統率力・行動力等がずば抜けており、率先して行動するあたりも理想の上司である。自分にも他人にも溢れんばかりの厳しさを見せるが、時折見せる隠し味程度の優しさが求心力の源であろうか。女性活躍推進法の啓発ポスターを作るとしたら知名度からもドーラ以外は考えられない。小学生でも法律の趣旨が一目瞭然である。

そのドーラをして、「私の若い頃にそっくりだよ。」と言わしめたのが、推進法予備軍の主人公シータである。ルシータ・トゥエル・ウル・ラピュータ、ラピュタの王女様であるが自身の出自を知らず、バズーと出会い、行動を共にする。ドーラのように「職」を持っているわけではなく、進路も含めて模索中のような状況であるが、自分のいる場所場所での役目を懸命に果たしている「前段階的な活躍」とでも言えようか。なるほど、ドーラが「そっくり」と言うように判断力や行動力に優れており、ドーラとは違ったあり方での求心力を保持している。現時点では推進法の中で「機会の均等」よりは、「家庭(バズーとのプライベート)との両立」を重視しているのかもしれない。

番外編として、どうしても挙げておきたい人がいる。バズーの親方のおかみさん(マッジの母)である。「女性の職業生活における活躍」を掲げる推進法においては、残念ながら対象外になってしまうと考えられるが、家事や子育てに奮闘している。『ラピュタ』の世界観では、前時代的な生活が描かれており、そこには「家を守る女性」が描かれている。推進法の趣旨にはそぐわないかもしれないが、生き生きと日常を営むその姿は「活躍」そのものであり、着ているシャツを破った旦那(親方)に対して、「誰がそのシャツを縫うんだい。」と吐き捨てる様は、到底、旦那にはできないであろうシャツの裁縫等シャドーワークにプライドを持って取り組む「活躍」のあり方が描かれている。おそらく、「活躍」していないなどという意識などなく、自分不在では家族の生活が成り立たないという自信に満ちた女性の姿である。

以上、3人の女性の「活躍」を見てきた。「母さんがくれたあの眼差し」から「母さんを見るあの眼差し」へ。こんな視点で『ラピュタ』を観る日が来るとは、子供の頃はもちろん、数年前の僕でも想像していなかった。1986年制作の作品が2020年現在の法律をわかりやすくしてくれるという事実。すでに女性の多様なあり方を意識し、それを作品に投影していたとすれば、社会学的命題のメタファーにすら感じられる。次の『ラピュタ』はどんな気づきがあるのだろうか。新たなる君をのせて。

【参考】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

・宮崎駿 1986『天空の城ラピュタ』ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント

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